一年を24に分けたものを二十四節気と呼び、
それをさらに3等分ずつにしたものを七十二候と呼びます。
ひとつの節気で大体15日間、ひとつの候で約5日間です。
6月21日~6月25日頃は、二十四節気で言うと「夏至」、
七十二候は「乃東枯」と名付けられています。
* * *
「夏至」になりました。
一年のうち、昼が最も長い時期です。
七十二候の「乃東枯」は、
「なつかれくさかるる(=夏枯草枯るる)」と読みます。
夏枯草とは、靭草(うつぼぐさ)のことです。
うつぼ草は、冬至の頃に芽が出て、ちょうど夏至の頃に枯れるので、
夏枯草という異名があるのです。
夏に枯れる草、なんだか不思議な感じがしますね。
うつぼ草の「うつぼ」とは、矢を入れる細長い容器のことですが、
この植物の花の部分が、まさに矢を入れたうつぼのように見えることから、
この名前がついています。
では、うつぼの「うつ」は漢字で書くとどうなるでしょう?
正解は、「空」や「虚」です。
「うつ」は空っぽや空虚という意味。
ですので、中身が空っぽのことを「うつろ」と言いますし、
矢を入れる容器も、中が空洞だから「うつぼ」なのです。
平安時代の『うつほ物語』の「うつ」も同じ。
主人公が自身の母親と杉の木のうつほ(=空洞の部分)で
暮らしていたことから、物語の名前になっています。
それでは「うつらうつら」は?
これは眠気を催しているときの言葉ですが、
心がぼんやりしているときにも使います。
心がぼんやりとは、心ここにあらずのこと。
それを心が空っぽの状態のことだと考えて、
昔の人は「うつ」という言葉を使い、「うつらうつら」という
表現をしたのかなと思います。
一方で、
うつ病の「うつ」は、漢字で書くと「鬱」
「鬱」は気分が晴れない状態を指すと同時に、
草木がこんもり茂っている様を意味します。
うっそうと茂っている状態ですね。
うつぼ草の「うつ」は空っぽのことで、
うつ病の「うつ」は茂っていることを意味する。
「うつ」という同じ音なのに、意味が真逆なのが面白いですね。