一年を24に分けたものを二十四節気と呼び、
それをさらに3等分ずつにしたものを七十二候と呼びます。
ひとつの節気で大体15日間、ひとつの候で約5日間です。
7月22日~7月27日頃は、二十四節気で言うと「大暑」、
七十二候は「桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)」と名付けられています。
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二十四節気が大暑になりました。
一年で一番暑いとされる季節です。
そして七十二候の名の通り、桐の花が実を結ぶ時期となりました。
さて、今日は桐のお話。
桐は湿度を防いだり、燃えにくいといった特徴があるので、
江戸時代頃から、庶民の間で桐のたんすが広まったようです。
また、女の子が生まれると桐を植えて、
嫁入りする際に、その桐でたんす等の嫁入り道具を作る風習もあったとか。
古代中国の思想では、
鳳凰は桐林に棲むとされていました。
鳳凰は、徳の高い人間が皇帝になると出現する
と考えられている、とても縁起の良い存在。
花札にも桐と鳳凰が描かれた札がありますね。
桐と鳳凰の組み合わせは日本でもとても高貴なものとして扱われ、
天皇の衣服に描かれています。
桐は皇室の紋章としても使われていました。
後に、足利将軍家が桐紋の使用を天皇から認められ、
その後、織田信長など限られた武将のみに引き継がれたことから、
武将にとっては憧れの紋章となっていました。
そして、桐というと思い出すのは『源氏物語』
そう高い身分ではないのに帝の寵愛を得たため、
他の妃から嫌がらせを受け、
若くして亡くなってしまった光源氏の美しい母。
彼女の名前が桐壺更衣でした。
宮中の彼女の住まいには桐が植えられていたため、
そこを桐壺と呼び、
彼女自身も桐壺更衣と呼ばれていました。
帝が日中いらっしゃる清涼殿から遠くて、不便な場所にある桐壺。
私が高校生でこの話を習ったときは、
桐壺更衣の身分が高くなく、他の妃から冷遇される様子を描くために、
彼女の住まいを不便な桐壺にしたのだなと安直に思ったのですが、
今改めて考えてみると、見え方が変わってきました。
桐には鳳凰が棲むという伝説、
そして、鳳凰は帝の象徴のような存在であることを背景にすると、
帝が羽を休める場所は桐の中でなくてはならなかったのだなぁと
とても腑に落ちる感じがしたのです。
桐壺で静かに愛を育む帝と更衣。
桐林に佇む鳳凰に重なって、
桐壺を心の棲み処とする帝の姿がしっとりと見えてくるような気がします。