一年を24に分けたものを二十四節気と呼び、
それをさらに3等分ずつにしたものを七十二候と呼びます。
ひとつの節気で大体15日間、ひとつの候で約5日間です。
8月28日~9月1日頃は、二十四節気で言うと「処暑」、
七十二候は「天地始粛(てんちはじめてさむし)」と名付けられています。
* * *
七十二候の「はじめてさむし」とまではいきませんが、
大暑の頃に比べると、暑さ和らぐ日も増えたような気がします。
「粛」を「さむし」と読んでいるのは、
「粛」に縮む・衰えるといった意味があるからです。
暑さが衰える=寒くなる
ということですね。
「粛」は、筆と淵を合わせて出来た漢字。
淵は危険な場所です。
だから、気をつけねばなりません。
そんな淵と筆を合わせた「粛」は、
筆を使う時には慎重にしなければならないという意味が
込められた漢字なのです。
私達は、慎重に行動するとき、
おごそかな気分になったり、心身が縮こまったりことがあります。
そのため「粛」には、
・つつしむ(=自粛)
・おごそか(=厳粛)
・ちぢむ(=今回の「さむし」の用法)
などの意味があるのです。
と前置きが長くなってしまいましたが、
ここからが本題。
七十二候にちなみ、今回は「天地」のお話。
天地は、訓読みすると「あめつち」となります。
あめつちは、単純に「天と地」という意味でも使われますが、
古典の中では、神様のいる天の世界も含めた世界全体・宇宙という意味で用いられます。
さて、
「あめつちの詞(ことば)」をご存知でしょうか?
現代の我々は、日本語の音を表すために五十音図を用いており、
文字を習うときも、五十音図を元に習います。
昔の日本人は、例えば「いろは歌」を使って文字を練習しました。
いろは歌は、
仮名47音を一音も重複させずに作った歌ですね。
あめつちの詞というのは、
いろは歌と同じように、仮名を重複させずに作ったもので、
いろは歌よりも古い(平安初期頃の成立)とされています。
あめつちの詞はこんな内容。
あめ つち ほし そら やま かは みね たに くも
きり むろ こけ ひと いぬ うへ すゑ ゆわ さる
おふせよ えのえを なれゐて
漢字に直すとこうなります。
天 地 星 空 山 川 峰 谷 雲
霧 室 苔 人 犬 上 末 硫黄 猿
生せよ 榎の枝を 馴れ居て
「えのえ」と「え」が2回あるのは、
ア行のエとヤ行のエを区別しているからです。
途中までは2音の名詞で揃っているのですが、
終わりの12文字で形式が崩れてしまっています。
2音の名詞が作れず、苦し紛れにそうなったのか、
はたまた、何か重大な暗号が隠されているのか、、、
ちなみに、いろは歌には暗号説がありますね。
(注・あめつちの詞は最後まで2音で読めるという説もあり)
このように、仮名を重複させずに文(歌)を作るという趣向は、
様々な人が挑戦しており、
明治時代には、懸賞の公募が行われています。
皆さまも、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか?