一年を24に分けたものを二十四節気と呼び、
それをさらに3等分ずつにしたものを七十二候と呼びます。
ひとつの節気で大体15日間、ひとつの候で約5日間です。
10月8日~10月12日頃は、二十四節気で言うと「寒露」、
七十二候は「鴻雁来(こうがんきたる)」と名付けられています。
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二十四節気が「寒露」になりました。
寒露とは、霜になりそうな冷たい露のことです。
七十二候は、鴻雁がやってくる時期という意味です。
雁(かり/がん)とは、カモ科の大型の鳥のことを指します。
そして、雁の大きいもののことを鴻(ひしくい/こう)と呼びます。
というわけで今回は雁のお話です。
雁は、秋になると北から飛来する渡り鳥です。
そのため、秋を告げる鳥とされています。
清少納言の『枕草子』の「春はあけぼの」は、
国語の授業で暗記された方も多いと思いますが、
秋の部分に雁が出てきたのを覚えていらっしゃるでしょうか?
「秋は夕暮れ(略)雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるはいとをかし」
(秋は夕暮れがいいわ。雁が連なって飛んでいるのが小さく見えるのは
とても趣深くて素敵ね)
雁は和歌にもよく詠まれますが、
雁の鳴き声は、寂しさや悲しみを感じさせるものとして登場します。
鳴き声つながりで言いますと、
鹿の鳴き声も、秋・悲しいとセットとなりますね。
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき
(奥山で、地面に散らばった紅葉を踏み分けながら、
雌鹿を求めて鳴く雄鹿の声を聞くと、秋は悲しいなあとしみじみ思う)
百人一首にも載っている猿丸太夫の和歌です。
古典の世界では、
動物の姿や鳴き声が、何らかの感情を湧き起こさせるものとして
使われることがよくあります。
このような感覚、価値観を意識することは、現代では少なくなってしまいました。
時には、虫の声など身近な動植物の音色に耳を澄ませて、
自身の感情と共にしっとり味わう時間を取るのも良いかもしれませんね。