一年を24に分けたものを二十四節気と呼び、
それをさらに3等分ずつにしたものを七十二候と呼びます。
ひとつの節気で大体15日間、ひとつの候で約5日間です。
12月2日~12月6日頃は、二十四節気で言うと「小雪」、
七十二候は「橘始黄(たちばなはじめてきばむ)」と名付けられています。
* * * * * * * *
橘の実が黄色く熟し始める時期となりました。
橘は、食用の柑橘類を指す古い言い方ですが、
特にヤマトタチバナを指すこともあります。
ヤマトタチバナは柑橘類の中で、日本唯一の野生種とされます。
果肉は苦く酸っぱいため、食用には向かないそうです。
今回は、橘が柑橘類全般を意味しているか、
それともヤマトタチバナだけを意味しているかは深く追求せず、
古典の世界で橘がどんな存在だったかをお伝えしていきます。
橘は夏の花として、よく和歌に詠まれましたが、
実の方もなかなかに重要な役どころです。
古代、垂仁(すいにん)天皇は、部下の田道間守(たじまもり)に対して、
常世の国に行き、「非時香果」を持ち帰ってくるよう命じました。
常世の国とは、海の遠い向こうにある不老不死の理想郷のこと。
非時香果は、「ときじくのかくのこのみ」と読みますが、
時を定めず常にある輝く果実といった意味になります。
不老不死の常世の国にある果実なので、
非時香果には不老不死の効用があったと考えられます。
そして、田道間守が持ち帰った非時香果が橘の実だったというのです。
(田道間守は一体どこに行っていたのでしょう・・・)
ただ残念なことに、田道間守が都に戻ってきた時には、
垂仁天皇はすでに亡くなっていました。
田道間守は非時香果を天皇のお墓に捧げ、叫び泣くのでした。
垂仁天皇は自分の死期を感じて、不老不死の妙薬を求めたのかもしれませんね。
このように、橘の実には不老不死の力があるとされたようですが、
なんと他にも似たような効用を持った果実が存在します。
一体何の果物だと思いますか?
答えは桃です。
古代中国の思想で、桃は魔除けや不老長寿の効果があると考えられていたのです。
その思想は日本にも入ってきて、
私達に身近なところでは、桃の節句にこの思想が反映されています。
なぜ三月の節句で取り扱われるのが桃なのかと言ったら、
魔除け(悪い気を払う)効果を期待しているからなのです。
古典の世界の人たちにとって、悪い気を払うことはとても重要だったので、
他にも、魔除け効果を持つとされる植物等はたくさんあります。
他の植物のことは、また折を見てご紹介していきたいと思います。