一年を24に分けたものを二十四節気と呼び、
それをさらに3等分ずつにしたものを七十二候と呼びます。
ひとつの節気で大体15日間、ひとつの候で約5日間です。
12月27日~12月31日頃は、二十四節気で言うと「冬至」、
七十二候は「麋角解(さわしかのつの おつる)」と名付けられています。
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今回の七十二候の「麋」とは、大きな鹿のこと。
鹿の角はオスにだけ生えていますが、
実は毎年生え変わっているのです。
春先に生え始め、この時期に抜け落ちるのだそうです。
この七十二候は、鹿の角が抜ける時期を指しているのですね。
鹿は古くからたくさんの和歌に詠まれてきました。
一年中生息していますが、
基本的に、鹿は秋の和歌に登場します。
というのも、秋の繁殖期のオスの鳴き声が、
物悲しく趣深いものとして特に好まれたから。
秋なので、紅葉とともに詠まれることも多いです。
有名どころだと、
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋はかなしき
という歌が百人一首にありますね。
現代語訳は、
人里離れた奥山にて、
紅葉を踏み分けながら雌を求める雄鹿の鳴き声を聞くと、
秋は悲しいものだと感じられる
鹿の鳴き声は、恋しい人を求める悲しみとして表現されることが多いので、
オスの鹿はそんなに悲しそうに鳴くのだろうかと、
ネットで検索して、発情期の鹿の鳴き声を聞いてみたのですが、
確かにとても甲高くて、
人の嘆きのようにも悲鳴のようにも聞こえると思いました。
実際に、鎌倉時代の『とはずがたり』という作品にも、
「ここもとに鳴く鹿の音は、誰が諸声にかと悲しくて」
(この辺りで鳴いている鹿の声は、一体誰が共に泣いている声だろうかと悲しくて)
と、鹿の鳴き声を人の泣き声のように受け取っている描写がありました。
このように、和歌の世界では悲しみと結びつくことの多い鹿ですが、
春日大社の神タケミカヅチは、神鹿に乗ってやってきたとされることから、
鹿には神の使いとしての側面もありますし、
鹿の音読みである「ロク」の音は、七福神の福禄寿の禄(ロク)に通じることから、
長寿の意味合いがあるともされています。
鹿はとても縁起が良い動物なのです。
さて、今回はここまで。
皆さまも鹿をお見かけの際は、ぜひ角や泣き声にも着目してみてくださいね。